2013年9月3日火曜日

【PickUp】顧客満足度は本当に売上げ増加に貢献しているのか

顧客満足。Customer Satisfaction。マーケやサービス開発、営業といったあらゆる現場で目標とされていますが、 実際のところ顧客満足の効果はどうなんでしょうか、という話です。
では、本日のネタ元記事です。 2つの記事があります。
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(1)「顧客満足度が上がれば売り上げも増える」のウソ、アメックスが採用した究極の指標「NPS」(2013/05/20


タイトルを見ると相反する内容のようですが、タイトルの印象ほど正反対のことをいってません。というかベクトルは同じ向きです。前者の記事では、
本当に役立っているのか分からない顧客アンケートをして業務改善に全く役立てない・役立たないよりも、コストをかけてきちんと顧客満足度を測り、上げていこう。それには最近アメリカで流行ってるNPSという指標がぴったり」(意訳)という内容です。
後者の記事も前者の記事にまるっと反論しているのではなく、
顧客満足度が全然役に立たないってわけじゃなくて。各業種によって程度に差はあるけど、顧客満足度が売上げにも繋がらない、てことはいえない。当社データではそう言えます」(超意訳)という内容でした。日経BPが顧客満足度調査をやってきてるから、意味がないとされたら存在意義が揺らぐ・・・なんてぶっちゃけすぎな理由はジョークだと思いますが、近々顧客満足度調査のデータ集が発売されるんでプロモーションを兼ねてるのでしょう。



(1)顧客満足度を測る指標とは


wikiによると顧客満足は「人は物品を購入するとき、その物品に何らかの満足を感じたときに購入するとの考え方」という風に表現されています。

顧客満足度を計測する手法は顧客アンケート調査が真っ先に思いつきます。日本ではアメリカを参考にしたJCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)なんて基準もあるようです。これがあらゆる業種の顧客満足度測定に使える指標なのかというとちょっと分からないのです。というのは、掲載されているスコアランキングはディズニーランドなどのエンタテインメントやホテル業が上位を占めています。

余談ですが、アクセスログ解析で、企業や商品の認知度、顧客満足度を示す指標はありますか、という質問を時々受けます。残念ですが、直接的にそれを示す便利な指標はありません。ウェブサイトのアクセスログはサイトを訪問したユーザーがどこから来てどういうページの遷移を経てどこで離脱したか、という ことが分かります。しかしユーザーが「どのような意図や意識をもって」や「何を考えて」という内心は、サイト内の行動から仮説を立てて推察するしかないのです。それで分かることはあくまでも断片的であり、真意は知る由もありません。

また、顧客満足度の高さが必ずしも業績向上に直結しない場合が多々あることも、これまでの指標やCRM運用の壁となっています。前出の(2)記事では顧客満足度と業種との数値的な連関が統計学的な手法で算出されています。しかし文中にも断りがあるように、すべての業種において高い連関があるわけではなくマチマチなんです。

・顧客満足度を客観的に把握し基準化する指標はあっても、あらゆる業種に適合するとは限らない
・顧客満足度は業績向上に直接的に貢献しない場合がある
 

 (2)変っていく顧客満足の中身

業績に直結しない例として思いつくのは高額の買い物、結婚式や葬儀などのイベント。これらはリピート購入というのはあんまりないですよね。サービス や商品を購入した顧客は高い満足を得たとして、この顧客満足度をどう次のセールスにつなげたらいいかというと、クチコミや推薦という方法が考えられます。 ウェディング系のサイトでの利用者インタビューやショップのレビューということになるかと思います。これは結構重要ですよね。ソーシャルメディアの普及で 人から人への伝播、推奨意志が、企業のブランドやプロモーションに影響するようになってきました。そりゃ「いい商品だなあ、いいサービスだなあ」と満足し ているだけでなく宣伝までしてくれたらすごくいい顧客ですよね、企業にとっては。
従来の顧客満足度は個々人に付随するものでしたが、ここ最近ではソーシャルメディアを経由して個人の気持ちが容易に表明され、伝播する状況になりました。つまり顧客満足度の変容が生じていると思うわけです。

顧客の「推奨意志」に注目したのが、先の記事に出てきた「NPS(ネットプロモーター・スコア)」という指標です。ロイヤルティ指標とも言われます。満足度が高い顧客が常に企業利益に貢献しているわけではないという前提のもとに、「推奨意欲」というソーシャルな繋がりをぶっこんでスコア化しています(超意訳)。(詳細な内容と定義は各種書籍を読んでくださいね!)
これは従来型のCRMから、ソーシャルという要素を加味した進化形といえます。ただ、私が読んだ書籍「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」中でも、利用例がBtoC型の販売・サービスでした。BtoCはソーシャルに親和性があるため、この指標とは非常に相性が良いのかなと思います。
こう書いているとわかりやすくてステキな指標なのになぜ広まらないのか?という疑問があるかもしれません。このNPSスコアの測定や判断にはNPS認定資格が必要なようで日本では取得者は数少ないです。また、測定方法や結果の信頼性についてもまだ論じられている段階です。
ひらたくいうと、すごくいい感じで分かりやすいけど使えねぇ~というところでしょうか。概念はいいのだけどね…
こういう指標や考え方もあるというくらいに今は把握しておくのがよいのかなと思います。

(3)まとめ

①あらためてクライアントの「自社の顧客満足」 を定義してみる
 →顧客満足の中身を具体的に列挙してみましょう。
②「自社の顧客満足」の事業貢献程度を調査する
 →顧客アンケートが通常の手段かと思います。ここで重要なのは、適当に質問を考えて適当に配布・回収するのではなく、統計学の論理と手法に基づいて作成し、必ず分析することです。

③高い貢献度と関係性があると推定される場合は計測する手段を考える。顧客アンケート調査や企業認知度調査は1年に一回でいい。自社媒体のブログ、ウェブサイト、ソーシャルメディアでの観測する指標を決める
④調査結果をふまえて検討、改善する

こうやって書いてみると、毎回同じことをまとめている気がします。しかしですよ。結果が出ないと嘆く前にこうした「当たり前のこと」をやっているかどうか確認してはどうでしょうか。効果が実感できないのは効果測定をきちんと目に見える形でやっていないことが多いのです。

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