2013年9月19日木曜日

【解析いろは23】Googleアナリティクスアップデート

メルマガをご覧になっていたら既知かと思いますがGAがちょっとグレードアップしています。
Googleアナリティクス 公式ブログ「新しく生まれ変わったセグメントのご紹介」:http://analytics-ja.blogspot.jp/2013/09/blog-post_17.html

タイトル通り、今回の一番の大きなアップデートは、セッション単位でのユーザーセグメント以外に、なんとなんと!ユーザー単位でのセグメンテーションが可能になった点です。どこから入ってどのページを見てコンバージョンする、といった行動の順序も指定できてしまう。いやー、すごいわ。
自分のGAを確認したのですが、まだ適用されていませんでした。これから徐々にリリースされるようですね。

 ■Googleの今回のアップデートポイント

夏が終わって一皮剥けたってカンジ。 夏休みに何があったんだい……?(ひとなつのこいかしらー?)

●アドバンスセグメント画面の変更で、よりわかりやすく・共有しやすく
セグメントが直感的に設定できるようになったのと、よく使うセグメントは★マークを付けてすぐに呼び出せるようになってます。

●セッション軸からユーザー軸での解析が可能になった
ここがさりげなく一番すごいアップデートだと個人的に思ってます。ユニークユーザーの単位でセグメンテーションできるようになります。ただ、気をつけなければいけないのがレポート。基本的なスタンスというか解析軸は、セッションであることに変更はないと思います。ですのでユーザー軸解析をレポートする場合はレポート軸が違うので、混乱が生じないように(解析側も)留意しておく必要があります。

●コホート分析(cohort analysis)ができちゃう
なんだそれ!という方はコチラをご覧ください(スイマセン、私もやったことがないです)。
定義を引用すると、
コーホート分析とは、同時期に同様な体験をする人々の集団(Cohort)が、時間の経過とともに彼らの行動様式や思考などにどのような変化が生じたのか、時系列でデータを収集することを通じて、これを明らかにすること。
指標の変化を「時代」「年齢」「世代」の3要因で分析する手法。
年代分析とも呼ぶ。 

です。
GAでは「ある期間の新規訪問者」をコホートとしてセグメントし、その後の行動がどのように変容したかを見ています。行動が変わったということは、どこかで意識変容が生じています。流入や意識変容の要因を分析することで、キャンペーンや広告、サイト内コンテンツのより深い分析と見直しが可能となります。

■時代はユーザーへ、統計学的分析へ

今年に入ってビンビン感じていたのですが、ここ数ヶ月で最も自分的にホットなテーマなのが「統計学的分析」です。学的、というのは、あくまでも学問ではなくビジネスの成果につなげるために統計学の知識や手法を使って、より精密に数字と事象を検討していくという意味でそう述べています。ビジネス解析は厳密な意味での「統計学」、学問ではないと個人的には思っています。

ただし、気をつけなければいけないことがたくさんあります。数字に人はいともたやすくダマされる、ということです。解析者もレポートを提出された側もそうです。レポートにちりばめられた、基準化した数値、相関係数、寄与率の数字は、「絶対的に確か」なものなのかというとそうではありません。そのような意味ではないのです。統計学を学んだときのことを思い出してください。ビジネス解析の本では深く書かれていないことかもしれませんが、ある手法を用いる前にその手法の数字の意味、用語の意味を十分に理解する必要があります。
結果だけを求めて統計の手法を用いるとなんかわかった気になってしまうんですよね、本当に自分自身がそうなのでイタイです。アイタター。
 今後は解析する側、レポートを受ける側どちらも統計リテラシーの高さが要求されるようになるかと思います。

では、ここで以前出した質問をもう一度。
「心筋梗塞の人の95%、犯罪者の95%が食べていたという食べ物を禁止すべきか。

常にこの質問と答えを忘れず、数字とその向こうにいるユーザーに向き合っていきたいと思います。

2013年9月18日水曜日

【PickUp】ホワイトペーパー:Webアクセス解析をビジネスに結びつけるための3つのポイント

ネタになりそうなホワイトペーパーの紹介です。

Webアクセス解析をビジネスに結びつけるための3つのポイント
(SAS Institute Japan株式会社 /ダウンロードには会員登録(無料)が必要。)

ウェブアクセスデータの活用ポイントと今後どう活用していくべきか、という内容がコンパクトにまとめられています。オチはSASの総合解析システムを使うといいよ!なんですが、アクセスログ解析の必要性から、これからホットになるであろうウェブ統計解析のことにも触れられています。

よく耳にする悩みとしてこういうのがあります。
「リニューアルの前に、あるいは新規サイト作成のときに解析ツールをいれて解析をしていきましょう、というと「なんで?」「そんな必要あるのか?」と言われる。どう説得したらいいか」
あるあるR(アール)。

あらゆる「なぜ」を追求していくことで道は開ける(かもしれない)

このホワイトペーパーに書いてあることは、たいして目新しくもないのですが、たとえば「ポイント1:目的を明確にする」ということに「なぜそれが必要か」ということを問い直して、自分の中で説明ロジックをもっておけば、クライアントに伝えるときにブレがないと思いますよ。

まず、「なぜ解析が必要なのか」というところを的確に伝える必要があるかと思います。解析をすることでどういう事業メリットが生じるか、という利益に絡めて話をすすめることですかね。あとわかりやすい例え話にするとか。

釣り堀で、クライアントさんはタイを釣るためにある場所に座りました。まず、釣竿に餌をつけないと魚はまず釣れません。タイなんてなおさらですよね。餌はクライアントさんのコンテンツですが、自分が座っている周囲にはまけても遠くにまで及びません。このままではタイが釣れるのはいつになることやら。釣れるまで待つのもいいですが、釣り堀の費用、餌の費用がかかります・・・という具合です。

また、「サイトを作りたい!」「リニューアルしたい!」の目的の「なぜ」を聞いてみることもおすすめします。インターネットへの期待や危機感の表れなどの動機を、言いだしっぺのクライアント自身がきちんと理解し、自己分析していることは意外と少ないものです。 大体、何かを変えたいという時点で何かが行き詰まっていると思うのです。人生と一緒ですね。

過去把握から未来予測へ。行動分析から意識分析へ。

最近、急激にこの傾向が顕著になっているように思います。
過去把握というのはウェブサイトのアクセスログ解析つまりユーザーの行動分析です。ソーシャルの場合はちょっと違っているところがあって、意識分析の要因を含んでいます。

そこにより多くのデータ、顧客データや会員情報、はたまたソーシャルメディアのコメントや投稿などのデータを結合してより詳細に分析し、解析学的手法を用いて、未来予測をすることは、すでにECサイト運用の現場では実施されています。顧客のセグメンテーションやロイヤルティの把握、リコメンデーション、来訪予測に基づくキャンペーンの内容と実施時期などなど。解析ツールにおいてもユーザー基軸は今後主流になると思ってます。 従来の集客や広告施策、ウェブ解析だけでは頭打ちの状況に来ているのかもしれませんね。

・取得できる情報や解析する方法が増えたこと。
・既存の過去把握だけでは行き詰まり感があること。
・より多くの情報で多角的に分析し、コスト削減。


最近、リスティングとかSEOとかLPOはいいツールがたくさんあります。その企業に応じたカスタマイズや動向把握は必要であっても、担当者の負担は随分削減されるし、結果として人的コストも削減されるのではないかと。
こう書いてみると、なんだか今はウェブ解析というものの過渡期に来ているのかなという気がします。

個人的に思うのですが、今後は、企業そのもののリソース分析や顧客分析などのインサイドマーケティングが地味に来るんじゃないかと思います。大きな企業ならばすでにそういうのはシステムとして組み込まれているわけですが、日本は中小企業が圧倒的に多いので、まだ未導入というところが多数だと思います。

ポイントとしては、理解できる人・担当者だけがやってるのではだめで、全社的に理解し、利用されるデータと、好きな時にそれらにアクセスできる仕組みが必要と思います。

でも、解析担当として自戒せねばらないのは、数字だけと向き合うだと思います。つい、やってしまいがちなので本当に自戒しています。数字が示すユーザーや顧客の行動、意識をくみ取り、未来に対して推測する。ということを忘れないようにしたいです(そんな大事なこと忘れるなよ!)。

2013年9月14日土曜日

【解析いろは22】Facebookの広告は使えるか?(リカバリー編)

先日とある勉強会でFacebook広告について聞かれて、ついネガティブな印象の反応をしてしまいました。スミマセン。できるだけ正確に答えようとして部分しか説明できていなかったので、ここでリカバリーしたいと思います。
自分が言いたかったのは、
「通常のウェブ広告と同じ集客効果を期待し、同じやり方をすると失望する」
ということです。
ファン数を増やして、コンテンツからリンクを張って本サイトに誘導する。その先の会員登録であったり商品購入のコンバージョン率はどうですか? もし本サイトへの直接の流入に較べてコンバージョン数やコンバージョン数が高いのならすばらしい!(奇跡だ!)ですが、外部サイトでのコンバージョンを目的とするとFacebookは即効性があんまりないと思ってます。海外ではこんな調査結果(参照元:ITメディアマーケティング Facebookのマーケティング効果を実感しているマーケターは37%――米調査結果発表)もあります。ま、しかし結論を急がないでください。

問い:Facebook広告は使えるのか?
答え:Facebookでの目的と「効果」を決めエンゲージメントを高めるコンテンツと広告の方法の戦略をしっかり作れば効果が出る、はず。
 
まずは、広告の性質の違いに注目です。
Facebook広告とGoogle広告の効果の違い 
参照:SEO Japan 13/1/16記事


グーグル広告は以下のように説明されています。
グーグルは目的地ではなくリソースである。ユーザーはグーグルを使って何かを見つけようとする。グーグルを利用する短い時間においても、複数の広告を提示する機会が存在する – まず、ユーザーが実施する有料検索広告はすぐに売買の価値をもたらす。

対して、Facebook広告はこんな風な説明です。
ユーザーをコアのサイトに留まらせることがフェイスブックの目標である。そのため、ユーザーをフェイスブックに留める機能の広範なインフラを用意しており (eメール、動画、メッセージ送受信等)、内向きの広告戦略はこの点を反映している。関心およびユーザー層のデータによるターゲティングは強力なツールで あり、ユーザーおよびスポンサーの双方において関連性の面で効果が見込めるものの、積極的にトラフィックをフェイスブックの外に向かわせ、ブランドのサイ トに導く行為には向いていない。

で、Facebook広告の特長については下記が端的に表していると思います。
フェイスブックは有料検索ではない。ディスプレイでもない。そして、その他のデジタルチャンネルとは異なり、ブランドのウェブサイトにトラフィックを直接送ることがフェイスブックの強みではない。
とはいえ、日本でもフェイスブックエクスチェンジというリタゲ広告の取扱いが始まったようなので、だんだんと検索広告との区切りが薄れてくるかもしれません。

じゃ、Facebookは何に使うのがよろしいのか、というと、これですよね。

●ブランディング
●ロイヤルティ向上(あるいはユーザーからの推奨のプラットフォーム)

前に「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」という本のレビューでも書きましたが、ブランディングやロイヤルティの計測は解析ツールだけでは難しいのも事実です。しかし本当に自社のブランディングや顧客ロイヤルティが成果に結びつくというステージに達しているのであれば、実施するべきだと思います。
例として、Twitterですが、ニッセンとファミマのKPI、KGI、LTVの簡単なレポート記事を引用します。
Twitterの公式アカウントのKPI、KGI、LTV分析
トライバルメディアハウス、ニッセンなど2社のTwitter公式アカウントのマーケティング効果を測定

KGIのブランド想起率、好意度、購入意向調査はアカウントのログ分析から出てきません。すべて別の調査です。
そんな調査、コストがないから出来ないんですけど! という反論もあるでしょう。確かに。ですので、出来ることとしては、KPIとその結果の間に何らかのつながりを仮定して見ていくことかな、と思います。マーケの第一歩でそこからスタートですよね。




いいね数を数多く集めることについて補足しておきます。
リーチの範囲はある数から減少します。これはコミュニケーションを目的とするソーシャルの性質上当然なことです。ファン数1万人~2.5万人でリーチは17.1%という調査結果があります。最大25000人が分水嶺になってるようですね。(情報元:ガイアックスメディアラボ http://gaiax-socialmedialab.jp/facebook/169 13/1/15記事)
まあしかし、リーチの裾野を広げるために、いいね数は大いに越したことはありません。
ですが、ですが。
前から色々いわれている「いいね!」を買ってファンを増やす問題があります。
また、ある程度のファン数を広告で獲得したからといって、それが質に結びつかないことは多々あります。広告をテキトーに全世界に向けて打ったらあら不思議。結構いいね数が集まるのです。でも、日本人向けに商品を売りたいのに、いいね!をしてくれたけど読んでもくれない、コメントもくれないような人って「ファン」といえますか? そりゃ効果でないでしょうよ、そこから自サイトに誘導しても。
 今後はいっそういいね!数の重要性が下がってきて、エンゲージメント、親密度や重みといった「質」がより重視されると思います。というかそうなっています。


Facebookマーケティング FBページの8/30の記事に最新の事例が紹介されています。結果だけなので、どういう過程があったのか気になります。そのうち、セミナーとかで開設してもらいたいです。

Facebookマーケティング FBページ
事例概要(PDF) http://fbrep.com//SMB/Luxa.pdf
いわゆる成功例とされるケースのキーワードは「コミュニケーション 」です。GoogleとFacebook広告の違いを理解しつつ、ユーザーとコミュニケートしてブランド認知や取り扱うサービスや商品の良さを伝えることに集中することだと思います。
とすると、FBの活用はスモールビジネスにも向いていると思います。ただしブランド認知が低い場合は、最初はとにかく友人知人、取引先にも宣伝し、広告も出して「いいね!」を集めることが「スタートラインに立つ条件」と思います。

最後にどうでもいい話を。
自分は基本的にものすごく饒舌です。でも、聞かれたことに正確に答えたいあまりに余計な周辺情報をくっつけすぎて、結局何が言いたいのかわからない、伝えたいことが伝わらないことがママあります。猛省です。
別の機会に仕事の話をしていたら、その人も「状況や情報をまだ把握していない人にいっぺんに情報を出しすぎると『うぐっ』となるから最近は聞かれたことだけ小出しに伝えるようにしている」と聞いて納得。

いっそ、海の底に棲む貝になりたいです。

2013年9月5日木曜日

【解析いろは21】アナリティクス以外の解析ツールに遭遇した場合

上場企業におけるGAの利用割合は64%だそうですよ、奥さん。(出展 Nexal の一期一会http://nexal.jp/blogs/2645.html) 
記事の中で
「お奨めの解析ツールありますか? ただしGAとサイカタ以外で」((株)Nexal提供」)
というセリフがあるのですが、これまだ言われます。アーチンも未だに健在です。

この記事でユニークなのは、サイカタ→GAへの変更パターン。社内で日々見るのに使えなければ結局意味がないのですよね。ウェブ解析の専属担当者がいるのならともかく、普通は他の業務の合間に見るのが多いでしょう。習熟する時間もそうそう取れないということも普通にあります。

導入にあたっては「使いこなせるか」より前に「日々の業務でどう使うか」「それが改善に活かされるか」を検討し、トレーニングの時間が担当者に負担になることによるリスクも勘案しましょう。というか提案のときやアドバイス時にそのことを伝えましょう。でないと、ノリノリな上司さんの横で担当者の人が暗い顔をして俯いてしまいます。

そもそも、解析ツールはすごくわかりにくい膨大な量のアクセスログをいかに見やすく分かりやすく表示するか、というためにあるのですから、業務の負担が軽くならなくては本末転倒です。根本的な問題として、ウェブ解析をする目的と体制が整っていないと、どれほど素晴らしいツールを導入しても劇的な変化はないだろう、と思います。イヤがられてもさらっとリスクや現時点の問題点は指摘することが、提案する側の責任だと考えてます。

長い前置きはさておき(前置きだったのか!)、そんなモテモテのGA以外のツールも使うことがある、という話です。大体、どんな解析ツールにもなにかしら特化した部分があります。例えば広告効果測定だったりユーザーセグメントが独特だったりとか。GAは結構遭遇するし、ノウハウもいろんなところで蓄積されているのですが、他のツールで解析をする依頼がきたらどうしよう、というのが今回のテーマです。

・アクセスログから知りたいことを聞く
 調査の範囲がこれで大体決まります。やろうと思ったらいろんなデータが引き出せてしまうのがログデータですが、興味本位ならともかく仕事でやる以上、作業時間・分析時間も想定してやることが大切です。
・特長を掴む
 強みや解析の評価軸を公式サイト等で調べましょう。解析ツールの評価軸って結構重要なんですよ。
・できれば事前にログインさせてもらう
 ログインしないことにはどんな機能があるか確認できません。実際、あるカテゴリのドリルダウンをしようと思ったら「それは有料のアカウントが必要です」なんて出てきてウェ~~~と思ったり。
・レポートする項目をピックアップした解析設計書を作ろう
 お互いに納得するために、どういう目的でどういう項目を見るか解析設計書を作ることを超・お勧めします。これで合意しておくと、調査漏れがないのと、データをまとめるときにスムーズです。
 まあ、そうはいっても後出しはあるんですけどね…○○について知りたい、とか。後で○月○日からやってたキャンペーンのことを知りたいのだけど、といわれても困りますぅ(> <)

私もさほど他のツールの経験はないですが、データの分類やセカンダリディメンションとの組み合わせで「これ」というデータを作成しやすいGAは、やっぱり自由度が高くて便利と思います。解析の軸が固定されていない分、自由に指標を組み合わせて確認できるのが良いです。
最初 GA → もっと詳しく知りたいから他ツール → やっぱりGAに戻る というパターンもあるのかもしれませんね。

2013年9月3日火曜日

【PickUp】顧客満足度は本当に売上げ増加に貢献しているのか

顧客満足。Customer Satisfaction。マーケやサービス開発、営業といったあらゆる現場で目標とされていますが、 実際のところ顧客満足の効果はどうなんでしょうか、という話です。
では、本日のネタ元記事です。 2つの記事があります。
IT Pro 記者の目 *途中まで公開。登録無料で続きが読めます
(1)「顧客満足度が上がれば売り上げも増える」のウソ、アメックスが採用した究極の指標「NPS」(2013/05/20


タイトルを見ると相反する内容のようですが、タイトルの印象ほど正反対のことをいってません。というかベクトルは同じ向きです。前者の記事では、
本当に役立っているのか分からない顧客アンケートをして業務改善に全く役立てない・役立たないよりも、コストをかけてきちんと顧客満足度を測り、上げていこう。それには最近アメリカで流行ってるNPSという指標がぴったり」(意訳)という内容です。
後者の記事も前者の記事にまるっと反論しているのではなく、
顧客満足度が全然役に立たないってわけじゃなくて。各業種によって程度に差はあるけど、顧客満足度が売上げにも繋がらない、てことはいえない。当社データではそう言えます」(超意訳)という内容でした。日経BPが顧客満足度調査をやってきてるから、意味がないとされたら存在意義が揺らぐ・・・なんてぶっちゃけすぎな理由はジョークだと思いますが、近々顧客満足度調査のデータ集が発売されるんでプロモーションを兼ねてるのでしょう。



(1)顧客満足度を測る指標とは


wikiによると顧客満足は「人は物品を購入するとき、その物品に何らかの満足を感じたときに購入するとの考え方」という風に表現されています。

顧客満足度を計測する手法は顧客アンケート調査が真っ先に思いつきます。日本ではアメリカを参考にしたJCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)なんて基準もあるようです。これがあらゆる業種の顧客満足度測定に使える指標なのかというとちょっと分からないのです。というのは、掲載されているスコアランキングはディズニーランドなどのエンタテインメントやホテル業が上位を占めています。

余談ですが、アクセスログ解析で、企業や商品の認知度、顧客満足度を示す指標はありますか、という質問を時々受けます。残念ですが、直接的にそれを示す便利な指標はありません。ウェブサイトのアクセスログはサイトを訪問したユーザーがどこから来てどういうページの遷移を経てどこで離脱したか、という ことが分かります。しかしユーザーが「どのような意図や意識をもって」や「何を考えて」という内心は、サイト内の行動から仮説を立てて推察するしかないのです。それで分かることはあくまでも断片的であり、真意は知る由もありません。

また、顧客満足度の高さが必ずしも業績向上に直結しない場合が多々あることも、これまでの指標やCRM運用の壁となっています。前出の(2)記事では顧客満足度と業種との数値的な連関が統計学的な手法で算出されています。しかし文中にも断りがあるように、すべての業種において高い連関があるわけではなくマチマチなんです。

・顧客満足度を客観的に把握し基準化する指標はあっても、あらゆる業種に適合するとは限らない
・顧客満足度は業績向上に直接的に貢献しない場合がある
 

 (2)変っていく顧客満足の中身

業績に直結しない例として思いつくのは高額の買い物、結婚式や葬儀などのイベント。これらはリピート購入というのはあんまりないですよね。サービス や商品を購入した顧客は高い満足を得たとして、この顧客満足度をどう次のセールスにつなげたらいいかというと、クチコミや推薦という方法が考えられます。 ウェディング系のサイトでの利用者インタビューやショップのレビューということになるかと思います。これは結構重要ですよね。ソーシャルメディアの普及で 人から人への伝播、推奨意志が、企業のブランドやプロモーションに影響するようになってきました。そりゃ「いい商品だなあ、いいサービスだなあ」と満足し ているだけでなく宣伝までしてくれたらすごくいい顧客ですよね、企業にとっては。
従来の顧客満足度は個々人に付随するものでしたが、ここ最近ではソーシャルメディアを経由して個人の気持ちが容易に表明され、伝播する状況になりました。つまり顧客満足度の変容が生じていると思うわけです。

顧客の「推奨意志」に注目したのが、先の記事に出てきた「NPS(ネットプロモーター・スコア)」という指標です。ロイヤルティ指標とも言われます。満足度が高い顧客が常に企業利益に貢献しているわけではないという前提のもとに、「推奨意欲」というソーシャルな繋がりをぶっこんでスコア化しています(超意訳)。(詳細な内容と定義は各種書籍を読んでくださいね!)
これは従来型のCRMから、ソーシャルという要素を加味した進化形といえます。ただ、私が読んだ書籍「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」中でも、利用例がBtoC型の販売・サービスでした。BtoCはソーシャルに親和性があるため、この指標とは非常に相性が良いのかなと思います。
こう書いているとわかりやすくてステキな指標なのになぜ広まらないのか?という疑問があるかもしれません。このNPSスコアの測定や判断にはNPS認定資格が必要なようで日本では取得者は数少ないです。また、測定方法や結果の信頼性についてもまだ論じられている段階です。
ひらたくいうと、すごくいい感じで分かりやすいけど使えねぇ~というところでしょうか。概念はいいのだけどね…
こういう指標や考え方もあるというくらいに今は把握しておくのがよいのかなと思います。

(3)まとめ

①あらためてクライアントの「自社の顧客満足」 を定義してみる
 →顧客満足の中身を具体的に列挙してみましょう。
②「自社の顧客満足」の事業貢献程度を調査する
 →顧客アンケートが通常の手段かと思います。ここで重要なのは、適当に質問を考えて適当に配布・回収するのではなく、統計学の論理と手法に基づいて作成し、必ず分析することです。

③高い貢献度と関係性があると推定される場合は計測する手段を考える。顧客アンケート調査や企業認知度調査は1年に一回でいい。自社媒体のブログ、ウェブサイト、ソーシャルメディアでの観測する指標を決める
④調査結果をふまえて検討、改善する

こうやって書いてみると、毎回同じことをまとめている気がします。しかしですよ。結果が出ないと嘆く前にこうした「当たり前のこと」をやっているかどうか確認してはどうでしょうか。効果が実感できないのは効果測定をきちんと目に見える形でやっていないことが多いのです。