2013年8月27日火曜日

【Books】ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略

タイトル:ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略-ロイヤルカスタマー進化論
著者:高見俊介
出版社:ファーストプレス
出版日:2011/3/25
おすすめ度:★★★
本書は従来型の顧客満足にソーシャルメディアの要素のひとつ「クチコミ(推奨)」を加味して考える、顧客像と指標NPS、それを用いた分析事例の本です。 ソーシャルメディアの企業活用の問題、ソーシャルメディア活用の重要性。NPSという顧客ロイヤルティ指標を用いた分析と業務改善というのがこの書籍の内 容です。ソーシャルマーケティング全体の流れやポイントを把握できるが、判断軸や結論がほぼすべて「NPSでは~」になっているのでそこはマスキングしないと使えないのですが、そうするとオチがないことになります。(なんだそりゃ)


出版は2011年ですが、現状も大きな変化はないように思います。その意味では内容が古びている感じはしません。「なう。」なマーケターが読んでも役立つと思います、半分程度は。なぜ半分かといいますと、NPSという指標の説明、それを使った実例と改善が全編にわたって基軸となっているからです。NPS自体はユニークで分かりやすい指標だと思いますが、いかんせん普遍化するには敷居が高い印象が否めません。というのも、日本では認定取得者がごく少なく(著者しかいないのでは?)、この指標の認知度が未だ高いとはいえません
ですので、この本はNPS部分はさておいて、ソーシャルマーケティングという視点で読むほうが分かりやすいし、そのほうがまだ役に立つと思います。じゃあソーシャルメディアマーケティングを理解するために買ってもいいかというと、今なら他にも本があるだろうからNPSやNPSの事例に興味がなければ買わなくていいです。

 <目次>第1章 ソーシャルメディア時代のマーケティング
第2章 ソーシャルメディア時代の顧客セグメンテーション
第3章 ソーシャルメディア活用策(前編)
第4章  ソーシャルメディア活用策(後編)
第5章  ソーシャルメディア活用策の効果測定
第6章  ソーシャルメディア時代に求められる「真」の顧客中心
  
以下、記憶に残った点です。

◎ソーシャルの企業活用が迷走するのは、ソーシャルメディア利用の目的が明確でないから。
 まあ、そうですよね。いや、目的はあることが多いのですよ、一応。企業認知度を上げたいとか、商品の売り上げにつなげたいとか。その目的に適しているのかどうか、達成可能性があるのかという検証や認知がないだけで。強いていうならソーシャルメディアにおけるKPIがない、というのが企業利用においては一番問題なのかも。
 
◎企業の顧客戦略の変化。顧客セグメンテーション
推奨意志があり、顧客収益性が高い人・・・天使
推奨意志はあるが顧客収益性は低い人・・・宣教師

推奨意志もなく顧客収益性が低い顧客(つまり企業や商品に不満を持っている)は反逆者。酷いww
顧客セグメンテーションをソーシャルという側面から再分類してプロモーション手法を変えるなど、面白いと思いました。顧客の心理に踏み込んだ調査で分析し、対応をそれぞれのグループで変えるといったことはこれまでのマーケティングでも常套手段でしょう。しかし、そういった煩雑な調査を「推奨意志」という軸でスコア化したことは評価していいと思います。わかりやすい指標と言われるわけです。

 
◎NPS(ネットプロモータースコア)
詳細はは下記を参照してください。
ウェブ担:用語集 NPS
調 査方法はいたってシンプルで指標として分かりやすいという利点がありますが、NPSはこの手法の提唱者及び会社に商標登録されています。勝手にテストだけ 流用して御社の顧客ロイヤルティを測りますとかなんとかやってると怒られると思います。(そのために認定者制度があるわけで)。これも、広まらない理由の 一つかなと思います。このテストだけで煩雑な顧客意識調査をせずに顧客ロイヤルティが測れる、という点では画期的ですが、精度やフィナンシャル指標との相関性については今も賛否両論です。今後の研究と実績次第ですね。

◎ソーシャルメディアの企業活用はCEOがキー
これはどこでも説かれますが、最も厚く高い壁ですよね。トップが旗を降ればそりゃ社員はやりやすいですよ。予算も付きますし。
日本でウェブへの投資の腰が重い理由はソーシャルメディア活用の効果が企業の経済効果と相関性があるというデータが今のところ明確なものがない、というのが大きいと思います(本書ではNPSだったら説明できるよと言ってるのですが、まあそれはさておいて)。しかし、私自身はソーシャルメディアの成熟が進むにつれて企業の活用の場も必ずある、と思ってます。

ソーシャルは中長期で運用、ROIでは効果測定するとおかしくなるとか不採算性だけ目に付くとか、分かるんですよ。分かってるんですよ。そのヒントを求めて本書を買ったのですが、問題提起だけで終わってしまったのが残念です。まあ、これらソーシャルの効果測定はみなさん、今現在、試行錯誤を重ねて進めています。大きな成功事例もよいのですが、大きな失敗と小さな成功事例の積み重ねがヒントになるのでは、と思っています。

2013年8月25日日曜日

【News】セミナー:2013年大阪ツールトレーニングセミナー(WACA主催)

来る9/13(金)に、インプレスの「ネットショップ担当者フォーラム2013 in 大阪」と同時開催で、ウェブ解析士協会主催の「2013年大阪ツールトレーニングセミナー」が梅田スカイビルで開催されます。
参照:http://web-tan.forum.impressrd.jp/events/ec/osaka201309/waca

参加費は無料で事前申込みが必要です。 「ネットショップ担当者フォーラム2013 in 大阪」とは別の申込みなのでご注意ください。
対象はECサイト運用をしている企業の担当者やECマーケの担当者がメインと思われます。もちろん、これから解析ツールをいろいろ試してみたいという人も情報収集できるのではないでしょうか。各種解析ツールのセミナーが11時から17時までみっしり行われます。
ツールセミナーと銘打っていますが、基本的にツールそのものの習熟を目的としているわけではなく概要説明や操作と見るポイントの解説という感じだと思います。各ベンダーが独自で行っている自前のツールのテクニカルセミナーではないでしょう。まあしかし、デモや資料を申し込まないとなかなか具体的な概要も把握できないので、その意味では良い機会だと思います。

各ツールは下記を予定されているようです。
・アクセス解析ツール シビラ
・ページ内分析アクセス解析ツール:ClickTale(クリックテール)
・SEO対策 SEOマスター」のご説明
・ユーザビリティツール ゴーストレック
・ ネット広告効果測定システム:AD EBiS(アドエビス)
・アクセス解析ツール サイトカタリスト

個人的にはアドエビスと サイトカタリストに興味津々なのですが、特にアドエビスのキャラクター、エビスくんのカバンに無造作に突っ込まれている無気力そうなタイくんが気になります。そんな虚ろな目でええんか!? 君の人生それでええんか!? これSEOと広告キーワード対策で廃人になった担当者のイメージだったら深い。 

セミナーの正しい聴講の仕方としましては、セミナーと銘打っている以上プレゼンターは参加者の情報やリード獲得などの目的があります。ですので、白紙の状態よりも事前に自分なりに各種ツールやベンダーの情報を収集してから臨むとより得るものがあるのでは、と常々考えています。ウェブサイトに掲載されている情報以上の内容を期待しております!

余談ですが、デモや資料請求は重要なリードですから、利用者の情報が欲しいという気持ちはすごく分かります。本気とひやかしを分ける第一ハードルだと思うのですが、これってひそかに機会損失じゃないのかなあと思うことがあります。各種ツールを候補として挙げるときに、まず推薦する立場として実際の画面や使用感、見方などを知識として知っておきたい、ということが良くあるからです。
しかも具体的に推薦する前に絶対聞かれることがあります。
「これまでどんな解析ツールを使ってきましたか?」
という質問です。

マーケをがっつりやっている企業や部署に所属していても、代理店契約などの縛りで複数の有料解析ツール(ソーシャル、SEOなどの各種調査・解析別ツールは別として)は使う機会はそうそうないと思います。
機能や時間制限があっても全然OKなので、メール情報くらいでデモで操作を試すことができたらなぁ・・・と時々思います。

2013年8月21日水曜日

【PickUp】機能からサービスへ~サイト内検索

ニュース元 :MarkeZine
「サイト内検索」がECを変える!「スピードとおもてなし」に大手ECも熱い視線を注ぐ、ゼロスタートの「ZERO-ZONE Search」
http://markezine.jp/article/detail/18219


当ブログで6月に「【解析いろは13】サイト内検索の存在感」というタイトルで書いたのですが、ECサイトのみならずどんな企業サイトでも重要だと思います。サイトサーチアナリティクスはもっと注目されてもいいと何度も(以下省略)
小ネタとしてアマゾンとの検索対決もやってみました(適当なので結果を信用しないでください。ダメ、絶対)。

2013年8月19日月曜日

【解析いろは20】ログ解析からウェブ解析への風

大人の夏休みも終わり、リフレッシュして、あるいは気怠くお仕事をしている人も多いと思います。長い休み明けのメール受信は、どうしてあれほど憂鬱なんでしょうね?
心機一転、今日は解析の風向きで感じたことをつらつら書いてますハイ。
<もくじ>
(1)ログ解析からウェブ解析への風
(2)GAの風向き
(3)今日のネタは明日実装されるかもしれない

2013年8月15日木曜日

【Books】SEXY? データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」

”小さな数字から、企業価値を変える新しい試みを。”
タイトル:SEXY LITTLE NUMBERS データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」/日経BP社
著者:ディミトリ・マークス、ポール・ブラウン 
私的評価:4点/5点

あらゆるデータを元にビジネスを、業務を改善していくための考え方と、実例の紹介です。Tips本やノウハウ本ほど具体的に方法論を提示しているわけではありません。万能の計算式があるわけではありません。「自分(達)はこう考えた」「これをやった」ということを、目標ごとにクローズアップして述べています。
・自分の知らないビッグデータ分析ビジネスというものを俯瞰して見る。
・あまたのビジネス書同様、自分の業務に当てはめたり空想で補ったり、自分なりに噛み砕く
ということができるなら得るものがあるかと思います。

◎目次
第1章 リトルデータでビジネスを成長させる
第2章 ターゲティング-誰にアプローチするか
第3章 メッセージ-何について話すか
第4章 ロケーション -どこで顧客を見つけるか
第5章 予算 -いくら費やすべきか
第6章 測定 -何が有効か、有効でないかをどう把握するか
第7章 最適化 -有効なものをさらに活用し、無効なものを排除するには
第8章 アナリティクスの未来
1章~7章の末尾には必ず「月曜日の朝にすること」という、簡潔なまとめがあって、これを実行しろよ、やらなくちゃ読んだ意味ねえよ、と言ってるようです(意訳)


書いてあることはさほど難しくもなく、目新しくもありません。分析せよ、仮説を立てろ、実行して検証しよう。業務改善に役立てよう。当たり前のことです。でも当たり前のことを通す、実行することはとても難しい。それがビッグデータ、超グローバル企業のコンサルや分析であっても同じだということが分かって、なんだかほっとしたのでした。文中に「がっかりした」「失望した」というワードを見るたびにニヤニヤ。解析における仮説を「非科学的」という顧客候補(そのくせ自分たちの判断は経験則に基づくというから矛盾している)、理由なく数字に反発するクリエイティブチーム、分析と営業、あるいはウェブ管理部門との遠い距離。ああ、あるある。乗り越えるために、分かり合うためにどうしたか、ということも、簡単ですが書いてあって面白かったです。

個人的には第5章の「予算の配分」、第6章の「重要なものを測定する」「データのビジュアル化」、第7章「クリエイティブへのフィードバック」がツボにはまりました。全編を通してデータをどのようにプレゼンテーションするか、というのが頻出するのですが、すべてにおいて「分かりやすく、シンプル」なんですね。
 「あることを正確に伝えたい」というのが、私の場合は文字数の多さに出てしまって、メールを読むのがしんどいとよく言われます(笑) でも書いてないと絶対後で説明を求めるじゃんよ! 
この本を読んで、最小限の言葉で短く伝え、相手から聞かれたら立て板に水のごとく語ろうと決めました。


余談。
セクスィーというとふーじこちゅわ~んか壇密しか浮かばないのですが、「魅力的な」という意味合いなんですね。魅力的という言葉にSEXYを使うところに欧米と日本の違いを少々、感じました。日本じゃセクスィーとは言わないでしょうなあ。きゃわわデータ、とか、データかわゆす、とか。

2013年8月13日火曜日

【解析いろは19】グランフロント大阪のイベントのバイラル効果を勝手に見てみる

お盆期間に入ったので閑散としていますね。今日から夏休みを、と思っていたらやり残したことがあったのでひっそり仕事をしています。

7月初頭に、当Facebookページの「解析のいろは」でニュースのみピックアップしたのですが、大阪の新名所・グランフロント大阪であるイベントがありました。「初音ミクinナレッジキャピタル」というイベントでございます(http://kc-i.jp/event/miku/)。7月12日時点では対応アプリがアンドロ用しかなかったのですが、iPhone用も間に合ったようですね。7/12のイベント開始直後はなかったので、後で追加されたのでしょう。
まあそんな訳で、ソーシャル代表としてTwitterでのバイラルはどんなもんだったか、ということをザックザクに粗くまとめました。
--------------------------------------------------------

利用した解析ツール:Topsy
計測期間:7/14~8/13(30日)
調査方法:「グランフロント+ミク」という最小のワードでのTweet数を検索。比較として「グランフロント」のみの検索結果を加える。「グランフロント」の検索結果には「グランフロント+ミク」も含まれている。 
基準:数の多寡については目標値、客観的基準が不明のため期間内の1日平均、特定の日の平均を算出して比較・検討。
--------------------------------------------------------


<データ>
◎期間内ツィート数累計
   【検索ワード】
グランフロント+ミク : 1,288 1日あたりの平均ツィート数 42.9 個  
グランフロントのみ:37,871  1日あたりの平均ツィート数 1262.3個 

◎最多ツィートの日 8/3のツィート数比較
   【検索ワード】 
グランフロント+ミク : 137
グランフロントのみ:1,454
 <参考>
・ライブの特設ページのソーシャルリンク(Twitter)が共有された数:369
https://twitter.com/search?q=http%3A%2F%2Fkc-i.jp%2Fhatsuap%2F
・告知ページがTwitterでツィートされた数:71
(「イベント:初音ミク in ナレッジキャピタル」で検索)



【グラフA】
 【グラフB】
  
<ばっくり考察>

◎期間内累計
計測期間内では1日あたり平均ツィート数1362個のうち、約3.4%がワード「ミク」を含むツィートでした。(但しこのワード「ミク」はイベントの初音ミクに限定されません。個人名等を含んでいる場合があります。というかありました)

 
◎最多ツィートの日(8/3)の動向
8/3にワード「ミク」を含むツィートが期間内で最多。一日あたり平均の約3.1倍であり、ワード「グランフロント」を含むツィート内での割合は9.4%と大幅に増加しています。

8/3の外部要因
・8/3~8/7 初音ミクのライブ上映初日


◎わかったこと

単純に「グランフロント+ミク」ワードで、ライブ初日の8/3にツィートが3倍近く増加している点から、ライブへの関心やクチコミは、同時に開催さいていたミク絡みのイベントよりも高かったのでは?という仮説を立ててみる。あとは追加調査。(おいぃ!)
--------------------------------------------------------
本題はここからです。グラフや数字に誤魔化されてはいけません。

この結果はグランフロントで行われた初音ミク関連のイベントについてのごく一部の、断片的なデータです
ワード「グランフロント」「ミク」を含まなくても、ライブのタイトル「夏祭初音鑑」や特設ページのURLを抽出すると、もっと「初音ミクに関連し、言及しているであろう」ツィート数は増えます。それらは含んでいないので、イベント全体のバイラル効果を見るにはデータが不足しています。ゆえに、調査方法と範囲、基準を明示してあらかじめ逃げの手を打っています。

ではこれが効果測定のやり方として間違っているかというとそうでもないと思うのです。どの範囲のデータで、どういう判断基準や方法をもって測定するかは解析する側が決めるべきことです。ただ、この一部のデータで全体のバイラル効果を推察するには根拠が乏しい。ですから数字については全く判断をせず事実だけ述べています。ずるい!

クライアントが期待する効果とは何か。それを測定するためにはどのような条件設定をすればよいか。
 イベントの効果測定、特にソーシャルについて測定する場合は、あらかじめ測定条件とゴールを決めておく
ということが大事なんです。はい、すごく長い前置きでした。

でも、最小の手間でやったのですが、ヒントは得られますよね。8/3はなんだかツィートが多いぞ、と。ライブ上映初日だぞ、と。その前後にはテレビCMが流れていて、 大阪ではポスターが貼ってあって、当日にぴあやその他のメディアでツィートされているようだ。それに較べて、イベント開始当日や前後は動きが少ない。通常イベントの告知は十分だったのか?などなど。これらの疑問も、解析をする上ではとても重要だと思います。特にイベントに絡んだ効果測定は定点観測と異なり、明確な目的と訴求、その効果が必要なのですから。


また、 「グランフロント+ミク」の検索結果のツィート数がこれで多いのか、少ないのか、ということについては基準がないため全く判断ができません。従って、割合を見てみました。これでお分かりかと思いますが、
目標や基準設定されていないとイイも悪いも判断できない 
のです。(そりゃ内部では設定されていると思いますが)。

ちなみに多分GA使ってますね、ログ取るのに。ソーシャルも見るんですかね。あーレポートが大変だぁ・・・

長い思考のお遊びにお付き合いくださりありがとうございました~。しかし、この過程こそが解析においてとても重要だと私は考えてます。
Topsyや、Yahoo!リアルタイム検索はタダで使えるツールです。ぜひ遊んでみてください。応用として、キャンペーン開始直後のバイラル動向だったり、イヤな話ですが炎上の有無の確認とか、そういったことにも使えますよね。

2013年8月7日水曜日

【解析いろは18】アクセスログ解析のKGIとKPIの意味

昨今、どこのサイトや本にも「ウェブサイトのKGIとKPIを決めてPDCA回そうぜ!」と書いてますが、よくよく読んでみるとKGIとKPIの内容がそれぞれで微妙に違ってます。で、実際、特にこれからウェブサイトのKGIとKPIを策定する場合に悩むことが多いのではないでしょうか。

1.結論
早っ! いや、これ正解というものを求めると訳が分からなくなるので最初に書きます。 
・大目的(ゴール)、それを達成するための目標と手段と計測手段(指標)の関連性が密であり、 
・レポート内でのそれらの定義をブラさない。
・それらを常に意識して指標を見る。
ことができれば、どれを何と呼ぼうが全然構わないと思います。でも分析する側は、自分の中とクライアントの間に共通の定義を持っておかねばなりません。これは絶対のお約束です。それをどうやって決めているのか(というより、どうしてこうなった!的な)ということをちょっとご紹介します。

「こういう目的のサイトにはこんなKPIを見るといいよ」的な内容を期待されている方もいらっしゃるかもしれません。なので、末尾に参考リンクを掲載しておきます。しかし重ねていいますが、それがあなたのクライアント全てに適しているとは思えません。結局は結論の1~3に戻らざるをえないと思いますよ?
 
2.「日本流」?のKGIとKPI
海外の解析ツールの仕様を確認していたとき、 主な指標が一覧できるダッシュボードで「重要評価指数(KGI)」というタイトルがついてました。
しかし、あるケースでの私のKGI、KPIの考え方は大体下記のような感じだったんです。
  =====================
(例)
★ウェブサイトの目的(ゴール):企業の活動内容と製品の認知度向上
 ■KGIその1:サイト全体の直帰率を下げる
   ┗KPI(1) サイト全体の直帰率 /判断指標 サイト全体の直帰率
     ┗想定されるアクション(対策) 直帰率の高いサイトトップページの見直し

 ■KGIその2:企業CSR情報ページを良くみてもらう
   ┗KPI(1):CSR情報コンテンツのッション数増加/判断指標 CSRコンテンツのセッション数    ┗KPI(2):ページインデックスの特定のコンテンツ誘導バナーをクリックした数/
  =====================
いわば、KGI=何がしたい、KPI=何をする+その判断、計測の指標をピックアップと、3段重ねでした。 なぜそんなこってこてにしたかというと、このケースにおいて、レポートする先の用語や解析内容の認識など、アクセスログ解析に対するリテラシーがさほど高くないからでした。

(ウェブサイトの本当の意味でのビジネス活用については最近になって浸透してきて、ようやく効果測定しなくちゃねというところに辿り着いたと思います。ですからソーシャル解析とその効果測定については、早いところはやってるけど、まだ少数派だと思います。)

話を戻します。解析ツールでKPIとして表示されている指標は、設定したKPI(を測る指標)として該当するものもあれば、そのままでは出てこないものもあります。ですので「これKPI(ドン!)」と出されてしまうと「じゃあこちらで設定したKPIの扱いはどうすれば?」とちょっと混乱したんです。
開発側にそのKPIの意図を聞いたら、海外ではこれで分かる。日本人が見るとそれまで使ってきたKPIと意味が少し違うようだ。という話でした。
海外がどうか、という話は海外案件をやったことがないのでわからないですが、この差は何かということを考えた場合、ある数値に対する認知、理解なんじゃね?と思った次第です。

アクセスログ解析という多くのユーザーが使うプラットフォームでも、取得する値とそれを当てはめる指標は共通です。 それら数値をどう使うか、というのがユーザーによって異なるだけです。えーとつまり、前記の(例)を書き直すと…
 =====================
★ウェブサイトの目的(ゴール):企業の活動内容と製品の認知度向上
 ■KGIその2:企業CSR情報ページを良くみてもらう
   ┗KPI(1):CSRコンテンツのセッション数 (←CSR情報コンテンツのッション数増加を測るため)*この緑の部分は記載しません
  =====================
とまあ、こんな感じです。KPI=Key Performance Indicator なのですから本来的にはこの使い方が妥当でしょう。業務上、簡潔に状況把握するにはこちらのほうがやりやすい。数値を見て把握できるわけですから。KPIの判断指標を「なぜそれを見るか」「その数字に対してどういう評価をすればよいか」がきちんと認知されていれば(←~ )は不要なんですね。「共有知」という言葉がしっくりきます。業務で、絶対に会計や営業では売上げや見込みといった指標を元に分析や把握をしてますよね。それが「共通の認識と言語」であれば数値だけで報告は通用するのです。PVやユーザー数の増減を見て一喜一憂しているだけ、というのとの差はここにあります。指標を見るという点では行為は似ていますが得られるものが全然違います


(なぜ日本の(?)KPIが回りくどいのか、なぜアクセスログ解析の指標が指標単体で「良い・悪い」といった判断基準になりにくいか、というのは特有の理由が思いつくのですが長くなるのでこれはまた今度。(いつだ!))

でも、「共有知」は短時間で生まれるものではありません。だからレポート内容一本で理解してもらうためにブレない程度にKPIを具体的・詳細に書くことも許されるのでは、と考えます。従ってレポートを作る前に、

 ・大目的(ゴール)、それを達成するための目標と手段と計測手段(指標)

は絶対に決めておく必要があるわけです、はい。KGIやKPIを考えるにあたって、どれを使うということを提示する前に、定義の内容と、それでクライアントの理解が得られるか、がとっても重要ですよね、という話でした。

<参考リンク>
具体的にどのようなKPIを採用すればいいのか、という参考です。記事の掲載年がちょっと古いのですが、内容はまた賞味期限だと思います。
Web担:Web解析のためのKPI大全

http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/04/05/9719

Web担:KPIづくり実践術 徹底解説(1) - ゴールが明確でないサイトでも大丈夫!

 

2013年8月2日金曜日

【解析いろは17】戦略的ソーシャル推進のために1:まずコレ読め。

実は、去年まではソーシャルメディアの企業活用というものに、個人的には懐疑的でした(ぉぃ)
マーケッターやリサーチャーが言うほどソーシャルメディアの「効果」というものに確信が持てなかったのです。しかし今年に入って、各所のホワイトペーパーや調査データを追っていくうちに、「あれ?なんかこれいいんじゃね? 将来性あるんじゃね?」と今更思うようになりました。
まず解析全般に言えることなんですが、効果測定の軸や指標、ゴール設定をするという認知がさほど高くないように思います。今年に入ってからなぜか急に解析に関するお尋ねが増えているのですが、まずアクセスログ解析の見方、ウェブの効果の測定についての基本の知識や考え方が、認知されていないあるいはアップデートされていないケースが圧倒的に多いように感じています。

・Facebookにせよ、Twitterにせよ、指標がさほど多くないこと
・どの解析ツールを使っても、元データはTwitterやFacebookが取得し、提供するデータであるという点(ただし解析データベースへデータをひっぱってくる設定やらでツールによって誤差は生じます)

という点で、ソーシャル解析というのは本来見やすいものだと思います。その反面、ソーシャルのコアである「エンゲージメント=ユーザーとの交流の深度」は数字では示しにくく、かつ、それを一つで測る、あるいは示す指標というのは今のところありません。だから最初にソーシャルのその企業なりユーザーなりのゴールを決め、KGI、KPIを決め、どういう形で測定していくか考える必要があるのですね。別にこれ、私の個人的な妄言というわけではありません。とあるリサーチデータでも、ソーシャルの企業活用において効果測定と満足度、その方法についてやるとやらないで差が出るというデータがあります。

 ゴールなき指標(KPI)はただの数字である

極論ですが、そんな感じで考えておいたほうがいいかと思います。
で、本日は、これから社内、あるいはクライアントにソーシャルメディアを導入する際に、ちょっと役に立ちそうな資料をご紹介します。


MarkeZine http://go2.shoeisha.jp/c/abnQajgwecgtslab
解説レポート:小売業者がソーシャルメディアで成功するために ベストプラクティスガイド(Adobe)
*無料。会員登録が必要です。

この資料に記載されているのはTipsではありません。ソーシャルメディアの測定に関する考え方です。営業上、あるいは社内で推進する場合、最初に結論ありき・結果ありきで進めることが多いかもしれませんが、ここに書いてあることは、関係者すべてが認識しておいがほうがいい、ありきたりで普遍的で、でも以外と認知されていない内容です。
実例も絡めて説明されており、かつ目標とそれに対する戦術という明確な筋道で書かれてます。「ソーシャルで儲けるために」的な本を買うよりこのドキュメントをさっと読んだほうがタメになると思います。15分程度で流し読みできます。